スポーツバイクに乗るうえで、サドルの位置調整は初心者にとって最初の難関です。
しかし、自分の感覚だけでポジションを決めてしまうと、ひざを痛めてしまう可能性があるため、注意が必要です。
この記事では、サドルの角度と前後位置の「基本セッティング」を解説します。
このセッティングを参考に、自分に合ったサドルの位置を探してみてください。
サドルの高さの調整方法については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
サドル角度の基本セッティング
サドルの調整は、アーレンキー1本で簡単にできるので、積極的に試してみてください。
ボルトは外れない程度まで緩めればOKです。
サドルの角度は「水平」が基本
サドルの角度は、水平が基本です。
前下がりや前上がりにすると、体に負担がかかったり、走行性能が低下したりする可能性があります。
ただし、サドルの形状によっては、水平よりも少し傾ける方が快適な場合もあります。
水準器を使って水平を出す
サドルの水平を取るには、30cmくらいの水平な板をサドルに置いて、水準器で確認するのがおすすめです(スマホアプリでも可)。
座面の中央がくぼんでいるサドルは、前後の突起部を結ぶ線が水平になるように調整すれば大丈夫です。
車体を水平にしてから作業する
「メンテナンススタンド」を使用している場合、後輪が浮いて車体が傾いてしまうので、調整を行う前に取り外す必要があります。
意外と気づかずに調整してしまいがちなので、気をつけましょう。
角度調整しやすいのは2本締めタイプ
1本締めのシートポストは、サドルの角度がズレないように溝が掘られているものが多いです。
しかし、この溝のせいで、微妙な角度調整が難しいことがあります。
一方の2本締めタイプは、無段階で傾きを調整できるというメリットがあります。
構造としては、2本のボルトでシーソーのようにバランスを取ってレールを固定しています。
したがって、角度調整を行う際には、2本のボルトを交互に均等に締めることが重要で、片側に傾かないように気をつける必要があります。
サドル前後位置の基本セッティング
一般的に、サドルが前寄りだと、力が入りやすく短距離向きとされ、後ろ寄りだとロングライド向きとされています。
また、前後位置を調整することで、ペダリングに使う筋肉を変えることもできます。
基本は中心に合わせる
最初に、巻き尺などを使ってサドルの全長を測り、その中心に目印をつけます。
シートポストの中心線と目印を一致させるように、サドルの前後を動かして固定します。
これが基本のセッティングになります。
ポジションを確認する
サドルに座ってクランクを水平にしたとき、膝の真下にペダルの軸が来るように、サドルの前後位置を調整します。
ひざの皿のわずかにくぼんでいる部分に、5円玉などの重りをつけた糸を垂らします。
この糸がペダルシャフトに重なれば、サドルの前後位置は、適正な位置にあると言えます。
実際に走行してみる
まずは、上で紹介した基本セッティングにしてから、1ヶ月または300km以上は乗っていただき、様子をみます。
それでも違和感がある場合は、ミリ単位で調節し、自分の感覚に合わせて微調整を重ねていきます。
体格や好みによって、わずかな前上がりや前下がりのセッティングにすることで、しっくりくる場合もあります。
極端なセッティングになっていませんか?
初心者がよくやりがちな例を紹介します。
前上がりのセッティング
前上がりのセッティングにより姿勢は高くなり、安定感が増しますが、走行速度はやや低下します。
また、ケイデンスが上がると腰が前に移動しがちなため、あえてサドルの先端を上げて前に行かないようにする人もいます。
ただし、このようなセッティングは陰部を圧迫する可能性があるため、上げ過ぎには注意が必要です。
しかし、男性の中にはやや前上がりの方が落ち着くという人もいます。
前下がりのセッティング
前下がりのセッティングは、より深い前傾姿勢が取れ、踏み込みがしやすくなりますが、腕や肩への負担が増加します。
陰部や恥骨の痛みを避けるために前下がりに調整する人もいますが、傾けすぎるとお尻の位置が定まらなくなります。
また、このようなセッティングをする人はサドルが高すぎる可能性があるため、こちらも注意が必要です。
女性の場合は、やや前下がりにするといいと言われています。
サドルが前過ぎる
サドルを前方に移動すると、ハンドルが近くなるので、初心者はついサドルを前方に出しすぎてしまいます。
このようなセッティングは、加速や瞬発力を重視するスプリント向きですが、初心者には適していません。
サドルだけでハンドルの位置を調整すると、ペダルを漕ぐ際にひざが前に出すぎて、最適なポジションを出せなくなります。
このような調整は、足の疲労を早め、ひざを痛める原因となる可能性があります。
サドルの前後位置は、普通の走り方をするなら、基本の位置で十分です。
もし、基本の位置から変えるのであれば、サドル以外のパーツ、具体的にはステムやハンドルのリーチの長さや角度を見直して、最適なポジションを見つける必要があります。
サドルが後ろ過ぎる
サドルを後方に移動すると、ハンドルまでの距離が若干伸びたようなポジションになります。
ヒルクライムやロングライドなど、持久力が必要になる場面で効果的とされていますが、これも極端すぎて初心者にはおすすめできません。
サドルのレールには、限界を示すマークが刻印されていることがあります。
この範囲を超えて固定すると、走行中にレールが折れてしまう恐れがあるので、必ず範囲内に収める必要があります。
どうしても後ろに下げたい場合は、「セットバックがあるシートポスト」を使用します。
サドルを後ろ寄りにしたい場合は、セットバック(オフセット)の大きなシートポストを使うことで後退量を稼ぐことができます。
例えば、「セットバック 20mm」は、やぐらの位置が後ろに2cm後退しているという意味です。「セットバック 0mm」はストレートタイプを指します。
おわりに
今回紹介した「基本セッティング」はあくまでも参考です。
最終的には自分の感覚に合わせて微調整を行うことが最も重要です。
ただし、初心者が自己判断でポジションを決めて突き進むことはおすすめしません。
サドルの調整は専門的な面があり、プロでも悩むことがあるため、基本を把握することは非常に重要です。
まずは今回紹介した「基本セッティング」を試し、しばらく乗ってみて様子を見ることをおすすめします。
サドルの高さの調整方法については、こちらの記事で詳しく紹介しています。