メカ好きの人でも、フロントディレイラーの調整だけは苦手という人が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、フロントディレイラーの調整方法について、基本的なコツや手順を画像とともにまとめました。
この手順に沿って作業を進めれば、正確な変速ができるようになるはずです。ぜひお役立てください。
関連記事:【初心者向け】リアディレイラーの調整方法を画像つきで解説!
変速の仕組み
フロントギアの変速がうまくいかない、異音がする、チェーンが落ちる。これらの原因は、おもに「フロントディレイラーの調整」が十分にできていないことによるものです。
まずは、調整作業を理解しやすくするために、簡単な変速の仕組みからご紹介します。
制御の中心となるガイドプレート
フロントディレイラーの制御の中心となるのが、外側と内側にある「ガイドプレート」です。
このプレートでチェーンを押してやることで、変速が行われる仕組みになっています。
適正な可動範囲に調整する
ガイドプレートは、チェーンとの適正なクリアランス(可動範囲)を保つことで、スムーズな変速を実現します。
リアディレイラーの調整では、このプレートが動く範囲を調整していくことになります。
2つのネジで調整する
クリアランスの調整は、以下の2つのネジで行います。
手前がアウター用(大きいギア)、奥がインナー用(小さいギア)の調整ボルトです。
大きなギアと小さなギアを使い分けるたびに、適切な変速ができるよう、それぞれの調整が必要になります。
使用する工具
作業に必要な工具は、プラスドライバー、六角レンチセット、プライヤーの3種類です。
取り付け位置の確認
クリアランス調整をする前に、フロントディレイラーが正しい位置に固定されているか確認します。
ガイドプレートの高さ調整
まず、「外側ガイドプレート」と「アウターギアの歯先」の隙間を調整します。
上の画像では、プレートが離れすぎています。
隙間が広すぎると、チェーンが外側に飛び出してしまうので注意が必要です。
正しくは、このように隙間を1~3mmに調整してセットしてください。
ガイドプレートの角度調整
次に、「アウターギア」と「外側ガイドプレート」が平行になるように調整します。
「アウターギア」を基準に、「外側ガイドプレート」が平行になっているか確認しましょう。
シマノのマニュアルによると、「アウターギア」の平らな面に「六角レンチ」を当てて、平行を確認すると良いそうです。
再固定する
もし位置がずれていた場合は、「固定ボルト」をゆるめて、適切な位置に固定し直します。
サポートボルトも忘れずに
「直付タイプ」のフロントディレイラーでは、画像の位置にある「サポートボルト」を使ってガイドプレートの角度を調整します。使用する六角レンチは2mmです。
インナー側のクリアランス調整をする
まずは、一番小さいインナーギアのクリアランス調整から行います。
インナー×ローに変速
最初にスプロケットを「一番大きなギア」に、チェーンリングを「一番小さなギア(インナー)」にセットします。
インナー側のネジで調整する
奥にある「インナー側調整ネジ」を使って、内側のガイドプレートとチェーンの隙間が0~0.5mmになるように調整します。
樹脂プレートとの隙間に注目
内側ガイドプレートの内側に「樹脂プレート」があるので、その樹脂プレートとチェーンの隙間に注目します。
わたしの経験では、ガイドプレートにチェーンが「触れるか触れないかのギリギリ」に調整するのがおすすめです。
気になるカリカリ音が鳴らなければ、多少触れてしまっても大丈夫。ほぼ0mmで調整すると、変速がうまくいくことが多いです。
ワイヤーを調整する
ワイヤーの調整は、インナー側のクリアランス調整が終わったこのタイミングで行います。
ワイヤーのたるみをチェック
このように、ゆるんでいたらワイヤーを張り直します。
プライヤーで引っ張って固定
「プライヤー」を使えば、素手よりも強く張ることができます。
最終的な微調整は最後にやるので、とりあえずピンと張れたらOKです。
アウターに変速できるか確認
シフターで変速して、インナーからアウターに変速できるか確認します。
ケーブルアジャスターを回す
もしアウターに変速できない場合は「ケーブルアジャスター」を使って調整してください。
アウター側のクリアランス調整をする
今度は、一番大きいアウターギアのクリアランス調整を行います。
アウター×トップに変速
最初にスプロケットを「一番小さなギア」に、チェーンリングを「一番大きなギア(アウター)」にセットします。
アウター側のネジで調整する
手前の「アウター側調整ネジ」を使って、外側のガイドプレートとチェーンが0~0.5mmになるように調整します。
外側ガイドプレートの隙間に注目
こちらもインナー側と同様に、触れるか触れないかのギリギリで調整してください。
「ダブルギア」の場合は、以上で調整完了となります。
トリプルギアの場合
「トリプルギア」の場合は、「ミドルギア」に入れてから、もうひと工程あります。
ミドル×ローに変速
スプロケットを「一番大きいギア」にして、チェーンリングを真ん中の「ミドルギア」に入れます。
内側ガイドプレートとの隙間に注目
他のギアと同様に、内側ガイドプレートとチェーンの隙間が0~0.5くらいになっているか確認します。
ケーブルアジャスターを回す
「ミドルギア」のクリアランス調整は、調整ネジを使わずに「ケーブルアジャスター」で行います。ここでも隙間がギリギリになるように調整してください。
変速の確認をする
実際に「シフトレバー」と「クランク」を操作して、変速に問題がないかを確認します。
「インナー ↔ アウター」間を交互に変速して、それぞれの動作を確認しましょう。
スプロケットのギアを変えて確認する
さらに、スプロケットを「一番大きいギア」と「一番小さいギア」にセットし、インナーとアウターの変速ができるかも確認してください。
意外とスプロケットのギアの大きさによっては、変速がうまくいかないことがあるので、しっかりチェックしてください。
微調整のやり方
変速がうまくいかなかった場合は、「微調整作業」に移ります。
まずは、「ケーブルアジャスター」を使って「ワイヤーの張り具合」を調整してください。
インナーからアウターに変速しない場合
これは「ワイヤーの張りがゆるい」ことがおもな原因です。
アジャスターを使って、ワイヤーをピンと張り直します。
半回転ずつ回して、変速できるところを探りながら調整してください。
もしくは、「アウター側調整ネジ」を反時計回り(Bの方向)に1/4回転ずつ回して、変速できるか試してみてください。
アウターからインナーに変速しない場合
これは「ワイヤーを強く張りすぎている」ことが主な原因です。
アジャスターを使って、ワイヤーの張りを少し緩めてあげてください。
クリアランス調整をやり直す
「ケーブルアジャスター」での調整にも限度があります。
これでもうまく変速しない場合は、ガイドプレートとチェーンの隙間が広すぎる可能性があります。
もう一度、上で紹介したインナー側とアウター側の「クリアランス調整」をやり直してください。
フロントディレイラーの調整は、スムーズに変速できる位置を根気よく探すことが大切です。
慣れていても、一発で正しく調整するのは難しいことなので、焦らずじっくり取り組んでください。
ワイヤーの初期伸び
「新品のワイヤー」を使っていると、ワイヤーが伸びて変速がうまくいかなくなることがあります。このワイヤーの伸びを「初期伸び」を呼びます。
「初期伸び」は一度経験すれば、それ以上伸びることはほぼありません。
もしフロントディレイラーの調整後に変速がうまくいかなくなった場合は、この「初期伸び」を疑って再調整してみてください。
まとめ
フロントディレイラーの構造上、多少の調整不足があっても変速はしてくれます。
しかし、チェーンとプレートがカリカリ接触するなど、調整のさじ加減で異音がでたり、変速ができなかったりするシビアな面があるのも事実です。
それらすべての不具合を解決するとなると、面倒で根気のいる作業となります。
メカが苦手な人は、自転車を購入したお店に頼めば無料で調整してもらえるかもしれません。有料でも相場は1,000円以下なので、ショップに依頼するのも一つの手です。